平成17年度鹿児島大学法科大学院入学試験

小論文試験の問題と出題意図

 

【小論文試験問題の出典と出題意図】

(設問1)

 1.出  典:堺屋太一著『日本を創った12人(後編)』
                          (
PHP新書006PHP研究所、1997年) 

 2.出題の意図: 石田梅岩の思想の残渣として「生産性や経済性を度外視してでも勤勉に働くのは非常に良いことだ」、「勤勉に働いていれば精神修行になり、人格が立派になる」があり、そしてこの裏の推論として「人格が立派であれば生産活動に勤勉に携わるはずだ」、「丁寧なつくりでない商品を製造しているのは人格下劣なやつらだ」という考えが成立していた(いる)。これが高じて、日本独特の細部重視、手続重視の意識となり、ひいては「高コスト社会」を生む一因になっていると指摘されている。本問は、このような「細部へのこだわり」、「手続き主義」から脱却すること、あるいは「手続きに溺れて目的を失う愚」を犯すこと等について、各自の考え・所感を問うたものである。説得力のある共感しうる論述内容になっておれば高い評価になっている。

 

(設問2) 

 1.出  典: 
     金沢地裁判決平成11年6月11日
     『賃金と社会保障』(旬報社、1999年、1256号38頁)
     名古屋高裁金沢支部判決平成12年9月11日
     『賃金と社会保障』(同上、2000年、1285号64頁)
 

 2.出題の意図: 24時間の介護が必要な重度障害者が、家族介護に依存せず、また施設入所も選択せずに、在宅介護を望む場合、多額の費用を要することを認識させた上で、その在宅介護を保障すべきかについて、考えをまとめさせる問題。個人の自己決定や選択という価値実現と国の財政事情という問題をどう調整させるかという、バランス感覚を見ようとする問題で、「在宅介護を望むのはぜいたくだ」とか、「それを保障すれば、国の財政が破綻する」といった感情論に終始した答案は低い評価に、施設入所の可能性やボランティアの活用などの代替手段に言及しつつ、それが望めない場合はどうするかなど、丁寧な事実認定と場合分けを行って論じている答案は高い評価になっている。

          なお、同裁判については、最高裁が上告を受理せず、高裁判決が確定している(平成15年7月17日)。ただ、原告の高眞司氏は、最高裁勝訴(収入認定の部分)にあたって、「つゆはれま 夢のかなたに 光さす」との歌を残し、平成16年に死去された。

 

(設問3) 

 1.出  典:ウィリアム・パウンドストーン著 松浦俊輔ほか訳
                  
『囚人のジレンマ』 (青土社、1995年)

 2.出題の意図: 本問は、ゲームの理論を素材にした論理的文章を解読し、その内容を的確に把握すること、そうして理解した内容を説得力のある解答として論理的に表現する力を問うたものである。なお、一言すれば、「協調」と「裏切り」の戦略と、「適量を食べる」と「大食いする」とは、理論的に連結関係にあるといえ、戦略としての意味づけは、文中の「思慮深い戦略をもった分かち合い派が大食い派に敗れ去り、その結果みんなの利益が少なくなる」や「裏切りは進化論的に安定した戦略なのだ。協調は安定した戦略でない」といった記述がヒントになる。

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以  上