平成18年度

鹿児島大学法科大学院

入学者選抜試験

個別試験 小論文 出題の意図

設問1

【出 所】
 渡辺洋三他編『日本社会と法』(岩波書店、1994年)
129 頁 9 行目-133 頁2 行目

 パターナリズムに関する文献を読み、判断能力を形成する過程にある者(とりわけ子供)への国家による後見的介入の根拠と限界について意見を述べさせる問題である。採点に際しては、子供に対する国家によるパターナリスティックな干渉の具体例をイメージできているか、他の人権制限法理との区別ができているか、国家によるパターナリスティックな干渉が正当化される根拠を論じているか、その際、判断能力を形成する過程にある子供の特殊性に言及し、そこから国家によるパターナリティックな干渉の範囲と限界を論理的に導いているか、等を中心に評価した。本問題は、法曹に不可欠な論理的思考能力を試す問題であり、上記点を踏まえて論理的に論旨を展開する答案は高い評価となったが、逆に、自己の体験談を延々と記述する答案や一般論に終始している答案は、総じて低い評価となった。

設問2

【出 所】
東京高裁判決平成17年3月25日賃金と社会保障1394号64頁
4段目2行から72頁2段目14行まで

 いわゆる学生無年金障害者訴訟の控訴審判決を題材に、障害による稼得能力の喪失に対する備えは、基本的に本人や扶養義務者の自己責任においてなされるべきという論理で、保険料を滞納していた学生への障害年金の不支給を正当化した判決に対する意見を述べさせる問題。
 2004年のイラクの人質事件以来、注目をあびている「自己責任論」に対して、どのような観点から批判や議論が可能かを、また批判等をどのように論理的に説得力ある形で展開できるかを見ようとする意図で出題した。法律家に不可欠な論理的記述能力を試す問題といってよい。
 したがって、判決の自己責任論について肯定論にせよ、批判論にせよ情緒的な記述に終始している論文は低い評価となり、逆に論理展開が明確で結論について根拠付けを丁寧に行っている論文には高い評価が与えられている。

 

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以 上