平成19年度

鹿児島大学法科大学院

入学者選抜試験

個別試験 小論文 出題の意図

設問1

【出 所】
 来栖三郎「文学における虚構と真実」『法とフィクション』(東京大学出版会、1999年)155頁〜213頁所収
157頁 13行目〜160頁 12行目

 小問1と小問2は、法科大学院での学習に不可欠な能力である文章の読解力と表現力を評価するものである。
 小問1は、論文の構造をつかむことができているかをみた。原論文から切り取られた部分は、フィクション小説の目的と手段・方法、結びという論理になっている。原論文では、1.虚構としての小説の目的([1]から[4][5]から[8])2.虚構の方法([9]から[10])、33.虚構世界から現実世界へ([12])と分けられている。節の分け方は著者と同一である必要はなく、文章の構造をつかんでいるものは評価した。
 小問2は、著者の主張の本質的な部分をつかんでいるか否かをみた。著者自身は、「虚構はまわり道である。一旦、現実から離れるが、再び現実に戻り、現実に対して真実を示し、逆に現実に影響を及ぼすのである」などとまとめる。主張の趣旨を理解し、自分の言葉で表現しようと試みたものを高く評価した。
 小問3は、論評という形式を借りて、法律家にとって必要な連想力・想像力を問うものである。原論文には、「『法律における擬制』論の準備のための学習ノートのつづき」という副題が付されている。著者は具体的な事件に法を解釈適用して答えを出すという営み・法的判断のあり方を模索し続け、文学・小説など多岐にわたる分野での営み・到達点からも学ぼうとしている。目の前に事件があり、法規範がある。そのときの関連づけに対する著者の苦悩への共感が、今後、法律を学ぶ上で必要である。受験者の出身学部(専攻分野)での、専門用語、定義・法則の類の役割・機能に思いを寄せて、本文章の主張との対話が期待された。ここでは論理的な構成力・表現力、著者の主張に対して自らの考察を十分に行っているもの、社会科学や学問一般の方法論へと視野を広げているものを評価した。

※[1]〜[12]は、試験問題文では「丸付き数字」で表記

設問2

 店主の採ろうとした万引き防止のための計画について、自己の見解を述べるとともに、自説に対する批判を述べさせる問題である。店主の計画について、どのようなメリットが考えられ、逆に、どのようなデメリットが考えられるかを多角的に分析できる想像力・分析力と、そのような分析に基づいて説得的に自説を展開できる論理構成力をみようとした。換言すれば、紛争の予防・解決に寄与するとともに、制度の在り方を積極的に提言できる活動的な法曹としての基礎的素養をみようとしたのが出題の趣旨である。
 それゆえ、店主の計画に賛成するにせよ反対するにせよ、計画のもつメリットとデメリットを多角的に分析・検討し、自説に対する批判を十分に考慮したうえで、自説を説得的に展開している答案には高い評価が与えられている。これに対し、自己の経験・見聞等を縷々述べるような答案、情緒的な記述に終始している答案は低い評価となっている。

 

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以 上