平成20年度

鹿児島大学法科大学院

入学者選抜試験 第一次募集

個別試験 小論文




◆問題用紙

こちらでご覧いただけます。

ただし、著作権処理の関係で、問題文については、引用箇所・変更箇所のみを掲載しています。問題用紙の現物は、鹿児島大学法文学部大学院係の窓口(鹿児島市郡元1-21-3 鹿児島大学郡元キャンパス)で閲覧することができます。

◆出題の意図

各設問の出題意図は、以下のとおりです。

設問1

【出典】
石原武政「〔連載第3回 届かぬ理論〕論理によって納得できるのか」
書斎の窓No.555 (有斐閣、2006年)30頁から34頁
引用:見出しを省略し、冒頭より34頁中段後ろから3行目まで

【出題の意図】
 本設問は、学問的な表現における論理と感覚について述べている3500字程度のエッセイを、20分間という限られた時間の中で読み、メモを作成するなどして大意を把握し、そこで述べられている論理と感覚の関係を600字以内で述べるという作業を課すものである。この設問では、法科大学院の学修に必須である、正確に大意を把握する能力、記憶やメモの作成により文章を迅速に処理する能力、記憶やメモに基づいて論旨を説得力のある文章で再構成する能力が発揮されることが期待された。
 採点においては、著者の主張を解答者自身の言葉で適切に再構成しているものを高く評価し、文中のキーワードを誤った文脈で引用しているもの、文中で用いられた説明のための比喩に長々と触れたもの、もっぱら自らの見解を述べているものは低い評価とした。

設問2

【出典】
樋口範雄「専門家の責任−法と法律家の役割−」
棚瀬孝雄編『市民社会と責任』(有斐閣、2007年)139頁から167頁所収
引用:139頁から140頁にかけて、樋口教授が「  」で引用した事例(もとはBette-Jane Crigger, Cases in Bioetics: Selections from the Hastings Center Report 7 (St.Martins Press 3d ed. 1998),樋口範雄編著『ケース・スタディ生命倫理と法』(有斐閣、2004年)152頁以下のもの)を出題の趣旨にあわせて、一部改変した。

【出題の意図】
 本設問は、医療現場を素材して、組織的活動の中で対立する立場につき、それぞれを擁護する意見を述べさせるものである。院長への直訴という設定は、弁護士が当事者を代弁して裁判官を説得するために立論を行うというイメージを想定してのことであり、また、受験生個々の内面的な立場がどのようなものであっても、与えられた情報のもとで、当事者の立場に立った主張を説得的に構成する能力を発揮することを期待してのことである。
採点においては、医師や看護師、患者、家族といった本設問の関係者が直面する問題状況を深く理解した上で回答を試みていると判断できるもの、設問中の(1)「医療チームに対してA看護師の勤務姿勢を理解するよう」という点と、(2)「A看護師に対して勤務姿勢をあらためるよう」という点を「院長に直訴する」という趣旨が適切かつ冷静に表現されているものを高く評価した。また、関係者の社会的責務や現場の状況について著しく理解にかけるもの、感情的な表現で論難するものは、低く評価した。
 なお、本文の事例は、生命医療における看護師の専門職倫理を検討する素材であったものを、本試験の趣旨に沿って文章を改編したものである。