設問2
【出典】
樋口範雄「専門家の責任−法と法律家の役割−」 棚瀬孝雄編『市民社会と責任』(有斐閣、2007年)139頁から167頁所収
引用:139頁から140頁にかけて、樋口教授が「 」で引用した事例(もとはBette-Jane Crigger, Cases in Bioetics: Selections from the Hastings Center Report 7 (St.Martins Press 3d ed. 1998),樋口範雄編著『ケース・スタディ生命倫理と法』(有斐閣、2004年)152頁以下のもの)を出題の趣旨にあわせて、一部改変した。
【出題の意図】
本設問は、医療現場を素材して、組織的活動の中で対立する立場につき、それぞれを擁護する意見を述べさせるものである。院長への直訴という設定は、弁護士が当事者を代弁して裁判官を説得するために立論を行うというイメージを想定してのことであり、また、受験生個々の内面的な立場がどのようなものであっても、与えられた情報のもとで、当事者の立場に立った主張を説得的に構成する能力を発揮することを期待してのことである。
採点においては、医師や看護師、患者、家族といった本設問の関係者が直面する問題状況を深く理解した上で回答を試みていると判断できるもの、設問中の(1)「医療チームに対してA看護師の勤務姿勢を理解するよう」という点と、(2)「A看護師に対して勤務姿勢をあらためるよう」という点を「院長に直訴する」という趣旨が適切かつ冷静に表現されているものを高く評価した。また、関係者の社会的責務や現場の状況について著しく理解にかけるもの、感情的な表現で論難するものは、低く評価した。
なお、本文の事例は、生命医療における看護師の専門職倫理を検討する素材であったものを、本試験の趣旨に沿って文章を改編したものである。
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