平成20年度

鹿児島大学法科大学院

入学者選抜試験 第二次募集

個別試験 小論文 出題の意図




◆問題用紙

こちらでご覧いただけます。

ただし、著作権処理の関係で、問題文については、引用箇所・変更箇所のみを掲載しています。問題用紙の現物は、鹿児島大学法文学部大学院係の窓口(鹿児島市郡元1-21-3 鹿児島大学郡元キャンパ)で閲覧することができます。

◆出題の意図

各設問の出題意図は、以下のとおりです。

設問1

【出典】
棚瀬孝雄『訴訟動員と司法参加 市民の法主体性と司法の正統性』(岩波書店、2003年)207頁から220頁
引用:209頁1行目から213頁7行目所収
なお、原文では節に付された見出しがあるが、これを省略している。

【出題の意図】
 本問は、アメリカと日本の裁判制度の一面を対比させつつ、裁判と人との関わりについて論じたエッセイを読み、著者の分析を踏まえながら、自分自身の見解を論述するものである。このことを通じて、1)著者が述べている内容を正確に読み取る能力、2)読み取った情報を明解に整理して提示する能力、3)著者が取り上げているテーマについて自己の見解を形成する考察力、4)自己の見解を論理的に展開する文章構成力を、総合的に試している。いずれも、法曹としてはもちろん、法科大学院の学生として専門教育を受ける上で、必要不可欠な力である。
  解答にあたっては、自己の見解を述べる前提として、著者が示している分析を正確に踏まえていなければならない。また、ここで見解の提示を求められているのは、著者が分析に用いた視点でもある「裁判と人との関わり」についてであり、この主題を離れた論旨を展開しても評価されない。たとえば、陪審裁判(あるいは裁判員裁判)と職業裁判官による裁判の利点・欠点などを、このエッセイの内容や「裁判と人との関わり」という視点から離れて一般的に論じたとしても、その論旨の当否に関わりなく、本問の出題趣旨には合致しない解答として低く評価されることになる。

設問2

【出典】
宇沢弘文著作集第12巻『20世紀を超えて ─都市・国家・文明─』(岩波書店、1995年)
第一部第5章 新しい都市を求めて 105頁から127頁所収
引用:107頁 1行目から111頁7行目
なお、原文の字句・構成を一部省略・変更した部分がある。

【出題の意図】
 小問1と小問2は、法科大学院の学習に不可欠な能力である文章の読解力、表現力および論理的思考力を評価するものである。
 小問1では、文章の内容を正確に把握できているか、それを的確に表現できているかをみた。ジェイコブスの四大原則を、文章の前後の関係、またジェイコブスの考えと対立する近代的都市計画の考え方(ル・コルビュジエに代表される)との対比から、それぞれの内容を理解できているか、それを文脈のなかに適切に当てはまるように表現できているかを評価の対象とした。語句・文章は著者と同一である必要はなく、内容を正確に理解しているもの、文脈における表現の適切さに配慮しているものは評価した。
 小問2では、論理的思考力をみた。文章には直接表れていない「歩道橋」を題材として、それが著者の目にどのように映るであろうかという問いを通して、著者の主張の本質的な部分を理解しているかを評価の対象とした。著者の主張はどのようなものであるのか、「歩道橋」が都市空間の中でどのような役割を果たしているのか、そのような「歩道橋」は著者からどのようなものとして判断されるのか、これら一連の論理を理解し、解答しているものは高く評価した。反対に自分自身の判断に引きずられ、著者の主張を的確に理解していないものは低く評価した。