平成21年度

鹿児島大学法科大学院

入学者選抜試験 第二次募集

個別試験 小論文




◆問題用紙

こちらでご覧いただけます。

ただし、著作権処理の関係で、問題文については、引用箇所・変更箇所のみを掲載しているものもあります。問題用紙の現物は、鹿児島大学法文学部大学院係の窓口(鹿児島市郡元1-21-3 鹿児島大学郡元キャンパス)で閲覧することができます。

◆出題の意図

各設問の出題意図は、以下のとおりです。

設問1

【出典】
中小企業庁編『2008年版 中小企業白書』「第3部 地域経済と中小企業の活性化」「第3節 中小企業の事業再生」

  引用:149頁6行目から152頁20行目まで。
なお、原文の字句・構成を一部省略・変更した。

【統計資料の出典】
中小企業庁編『2008年版 中小企業白書』より
150頁・第3-1-22図(図1)
150頁・第3-1-23図(図2)
151頁・第3-1-24図(図3)
152頁・第3-1-26図(図4)

【出題の意図】
 中小企業の事業の破綻と再生について、1)中小企業が事業破綻、倒産に至った際、その形態別件数の推移を示すグラフ、2)中小企業の周辺で生起する事業破綻の状況に関するアンケート調査の結果を示すグラフ、3)事業の継続に困難さを実感した中小企業が採った対応策の内容を示すグラフなどを参照し、これらの資料から設問に対応する回答に必須の要素を読み取り、論理的整合性のある形に組み立てて、制限字数内でまとめるといった能力を評価した。
 2つの設問で問うている内容は、日頃、社会問題や経済情勢の動向に関心がある者なら、マスコミ報道等で目にする機会が少なからずあり、その意味では、およそ常識的かつ想定可能な結論を回答として導けるはずである。その際、与えられた資料の内容を裏付けとして活用し、回答を補強することが求められ、回答の結論と資料を分析した内容との間に、説得的な牽連性が認められる答案が高評価を得られる。逆に、一般論的論述に終始する回答は、低い評価にならざるを得ない。

設問2

【出典】
T. イーグルトン(大橋洋一訳)『文学とは何か』(岩波書店 1985年)
引用:299頁1行目から302頁10行目まで。

【出題の意図】
 本問は、法科大学院の学習に不可欠な能力である文章の読解力、表現力および論理的思考力を評価するものである。
 文章(著者の主張)の内容を正確に把握できているか、それを的確に表現できているかをみた。一般的な主張・用語法と異なる著者のそれを、一般的な主張・用語法(本問との関係においてはある種の先入観)に引きずられることなく、問われていること(著者の主張・用語法)を理解できているか否かが、第1の評価基準である。
 第2の評価基準は、同じ用語を用いながら、その意味・目的が、一般的なものと作者のものとで差異が存在している「やや複雑な事態」を、文章として適格に表現できているか否か、である。明確に・わかりやすく伝えよう、という努力が見られるものは加点要素とした。
 全体として、自分自身の考え・判断に引きずられ、著者の主張を的確に理解していないもの、は低く評価した。
まとめ方の骨子を例示すれば、
「著者によれば、「文学理論」「効用」には2つのものがある。これまでの「文学理論」と著者の「文学理論」である。
 これまでの文学理論は、政治的なものでありながら、そのことに無自覚であるがゆえに、現在の政治体制の諸前提をささえ強化するのに奉仕してきた。いわば、これがこれまでの文学理論の実際的な効用ある。これに対して、著者の文学理論とは、文学理論の政治性と、文学理論が現在の権力体制を強化してきてきたことを自覚することであり、そのことが著者の考える文学理論の効用である。」